2021-06-17 16:46:08
デジタル・ユーロの経済的影響
欧州連合(EU)でCBDC(中銀デジタル通貨)が実装された場合の経済的影響を考察する金融大手モルガン・スタンレーの分析が公開された。ロイターが報じたところによれば、欧州圏の銀行預金額の内、約8%を吸収する可能性があるとの試算結果が出た。
これまで公開された情報では、CBDCを保有できる一人辺りの限度額は、3,000ユーロ(約40万円)に定められているという。この数値を基に、複数のシナリオを想定した分析結果を公開した。
仮にユーロ圏に在住する15歳以上の全ての市民が上限額の3,000ユーロをデジタル・ユーロに換金した場合の理論値では、欧州の銀行預金額が8%減少するという結果が算出されている。
モルガン・スタンレーのアナリストらによれば、ラトビア、リトアニア、エストニア、スロバキア、スロベニア、ギリシャなどの小国において、この割合はさらに大きくなる可能性がある。ただ、デジタル・ユーロに換金される額が欧州市民の平均残高の12%(≒約40万円)以下であれば、ギリシャなどでも預金額への影響は、10%に留まるとの結果が出ている。
また、デジタル・ユーロが導入された場合、預貸率(loan-to-deposit ratio)が現在の97%から105%に上昇する可能性も懸念される。
預貸率(よたいりつ)とは
預金貸付(LTD)比率は銀行の預金額に対する貸出額を示すもの。銀行の流動性を図る比率で、運営指標の一つとされている。
LTDが高過ぎる場合は流動性が不足している状態を示すため、有事の際に対応する資金不足が懸念される反面、低過ぎる場合は収益率が最大化されていない場合もあり、理想的な比率は80から90%。
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