今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の伊山京助 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
Decentralized Science(DeSci)という、科学研究においてスマートコントラクトやトークンなどのブロックチェーンツールを活用する分散型サイエンスの概念が普及しつつあります。これまで仲介業者が握っていた所有権を解放し、資金調達の方法を一新するとして、a16zが記事を公開したことで多くの人々に知られるようになりました。これまで数々のプロジェクトがヨーロッパを中心に生まれており、バイオテクノロジーに焦点を当てたものが多く見られます。
DeSciWorldは科学コミュニティをサポートし、活気のあるエコシステムを構築していくことを目指しており、今回はその中で用いられているMicrobes NFTについて解説させていただきます。
DeSciWorldとは?
DeSciWorldは、DeSci全体のエコシステムを発展させることを目指しており、P2Pの資金調達プラットフォームや、DeSciコミュニティのインフラを構築することを目指しています。
DeSciWorldのコミュニティには研究者、開発者の参加が奨励されるのはもちろんのこと、研究者以外の一般の人々やアーティストも参加が奨励されています。これはステークホルダーを増やすことで科学研究の資金を強化するという側面はもちろんのこと、科学の分散化において技術インフラのみに焦点を当てていないということを意味します。つまり、アートが持つ美学、精神性、創造性の価値と、科学の持つ不変の真実と美を組み合わせることで、多くの新しいアイデアが生まれることが期待されています。
DeSciWorldのプロダクトについて
DeSci Dashboard
DeSci DashboardはDeSciWorldにとっての主要プロダクトです。現在、DeSciは黎明期であり、様々な情報が散乱しています。これを解決するために、現在はDeSci WikiというGoogleドキュメントで情報が集約されています。しかし、Googleは中央集権的だと考える人が多いため、Googleドキュメントを活用することに嫌悪感を抱く人も多く見られていました。これに対しDeSci Dashboardは、DeSciに特化した無料で使用することができる情報アグリゲータとなるべく、現在開発が進められています。
DeSciプロジェクトは申請することでDeSci Dashboardに無料で情報を掲載することができ、ユーザーはリストアップされているDeSciプロジェクトを検索、フィルタリングすることができます。DeSciプロジェクト側は、トークンやガバナンスの提案に関する情報、メディア情報、プロジェクトに関する簡潔な説明、その他の重要事項は何でも掲載することができ、ユーザーはコミュニティに飛び込む前にプロジェクトの全体概要を簡単に知ることができます。DeSci Dashboardの表示画面は以下の通りです。
ユーザーは以下の3つの指標を見ることができます。
- Snapshot APIを通じて測定された、DeSciWorldに掲載されている各プロジェクトごとのガバナンスに関与しているユーザー数の合計値
- DeSciWorldのダッシュボードにリストアップされたプロジェクトの合計値
- P2P助成金プラットフォームが取り扱った助成金の総額
NFT Spotlight
NFT Spotlightは、科学研究に関するNFTをMintできたり、パートナープロジェクトになることができるサービスです。クリエイターは技術的なサポートを受けることができ、プロジェクトの立ち上げを支援してもらうことができます。また、技術的支援に加えて、マーケティング面でのサポートも受けることができます。プロジェクトが公開されてから一週間はDeSciWorldのランディングページで紹介されたり、DiscordのSpotlightチャンネルの運用を行いAMAを開催することもできます。また、NFTのマーケットプレイスとギャラリーを運営するNFTKEYと独占パートナーシップ契約を結んでいます。NFTKEY上でDeSciの専用のスペースがあるため、初期段階にあるNFTプロジェクトがより認知されやすくなります。
Events Calendar
現在、DeSciだけに留まらず、様々なWeb3関連のイベントがTwitter Spaces、Discord、Twitch等の媒体で行われています。それぞれのプロジェクトが自律分散的にイベントを行っているのは業界にとっても望ましい姿ではありますが、それと同時にイベントに関する情報が分散してしまっています。現在の解決策として、Web3 Women In ScienceのファウンダーであるAriellaが情報をGoogle Calendarに整理してくれています。しかし、Googleは中央集権的な存在と認知されているため、コミュニティから嫌悪感を持たれています。そこでDeSciWorldでは、Backdropを利用することでこれを解決しようとしています。BackdropはWeb3ツールであり、ウォレットに持っているトークンに紐づいてイベント情報を通知したりすることができます。
Microbes NFT
Microbes NFTは、サイエンスコミュニティとWeb3コミュニティの架け橋になることを目標にした、ウイルス、微生物等が描かれたNFTアートです。Imperial College Londonの研究室にかつて所属していた博士課程の卒業生が、これまでの研究から得られた画像を提供し、このコレクションの源泉となりました。この提供された画像データを基に、DeSciWorldの初期メンバーである微生物学博士のKira Eiliersがコンセプトを定め、アートチームと共同で創り上げたものです。詳細については次章でご説明させていただきます。
Microbes NFTがどのように研究開発支援を行っているのか?
Microbes NFTで得られた売上は主にDeSciWorldで発生する初期の費用と、 DeSciWorldDAOへの寄付に利用されます。具体的には、チームメンバーの採用、UXやデザインの改善、研究者へのフィーとして利用されています。DeSciWorldDAOの資金を効率的に使用することで、DeSciに関わる人々の数を増やし、より発展させることが目標として掲げられています。また、Microbes NFTを所有することで、アーリーアダプターと認識され、様々な待遇を受けることができます。
- Snapshotを通じて、DeSciWorldの今後行われていくガバナンスに参加することができます。
- NFT Launchpadの優先権を得ることができ、優先的にホワイトリストに登録することができます。
- DeSciWorldやDeSciが発展していくにつれて、メタバース空間を利用していく未来が予想されます。Microbes NFTを所有することで、VIPチャット機能や、DeSciに関する特別イベントの参加、エアドロップ、グッズ配布などの待遇を受ける事ができます。
- DeSciWorldのホームページにはIPFS経由でロックされているコンテンツがあります。Microbes NFTが含まれたウォレットを接続することで、研究データ、レポート、画像ファイルなどを閲覧することができます。
まとめ
今回はDeSciのコミュニティを統合し、エコシステム全体を発展させていくことを目指したDeSciWorldと、そこで活用されているMicrobes NFTについてご説明させていただきました。現在DeSciは黎明期にあるため数多くのプロジェクトが散見されていますが、DeSciWorldのようなコミュニティのインフラとなりうるプロジェクトは非常に有望視できるかと思います。また、Microbes NFTを所有することでアーリーアダプターとして認知されることは、数年後DeSciが発展した時に大きな信用を得ることができると思います。今後のDeSciWorldの動きに注目必須です。
【参照URL】DeSciWorld – Twitter
【参照記事】Microbes — NFT
【参照記事】DeScientists Unite!
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
当社では世の中をWeb3.0の世界に誘うことを目的に、Web3.0とDAOをテーマに事業を行っています。NFT×音楽の分野では、音楽分野のアーティスト、マネジメント、レーベルなどとNFTを活用した新しい体験を図るプロジェクトを行っています。
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